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下中 直人 氏
文化通信(2009年1月19日発行)特集
「東京国際ブックフェアで出版不況乗り切る糸口を」
[対談]
株式会社筑摩書房 代表取締役社長 菊池明郎 氏
リード エグジビション ジャパン株式会社 TIBF事務局長 天野桂介
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東京国際ブックフェア(TIBF)2009は7月9~12日、東京・江東区の東京ビッグサイトで開かれる。前回は過去最多の31カ国・地域から763社が出展、61,384人が来場したが、日本書籍出版協会が検討組織を設けてこれまで以上に積極的に関わるなど、充実を目指した取り組みが進んでいる。TIBFの役割や効果などについて、書協で検討委員会座長を務める筑摩書房・菊池明郎社長と、リードエグジビションジャパンでTIBFを担当する天野桂介事務局長に聞いた。

予想以上に多かった若者の購入

― 筑摩書房はしばらくぶりの出展でしたが、今回出展したきっかけは何でしたか?

菊池 : 当社は昨年、8年ぶりに出展しましたが、前年に日本書籍出版協会の小峰紀雄理事長がTIBFの今後について問題提起をされ、TIBF検討委員会を設置することになり、私がその委員会の座長に就任しました。検討する上で、ブースを出す必要があると考えたのです。

― 手応えはいかがでしたか?

菊池 : 読者から大きな反応があり、期待以上でした。即売での売り上げも大変良く(560万円)、ブースが来場者で一杯になることもしばしばでした。私自身も「あ、筑摩が出ている」という来場者の声を聞いたときには、出展して良かったと思いました。意義を感じている社員も多く、引き続き今年も出展します。
天野 : 筑摩さんの出展が呼び水になり、人文系の専門出版社の出展が非常に増えたのが前回の特徴でした。その結果、人文のエリアや版元のブースは、相乗効果でとても盛り上がりました。

― 出展してどのような効果がありましたか?

菊池 : 文庫などを多く買っていく方に、20~30代の若い読者が多かったことに驚きました。 当社の中心読者層は40~60代の中高年なのですが、ブースには若い方が詰めかけ、実際に購入して頂いたのです。 さらに、そういう方々がいろいろな要望や質問をぶつけてくれたので、ブースにいた若い編集者や営業担当者にとっては新鮮な経験で良いマーケティングになったと思います。

企画説明会場も設置へ

― TIBFには読者謝恩とともに、書店や取次、図書館などとの業者間のビジネス、そして海外からの来場者との著作権ビジネスなどの目的もありますが、いかがでしたか?

菊池 : 当社のブースは一般来場者で混み合ってしまい、ビジネスの話はあまり上手くできませんでした。それについてはリードさんから新たなご提案もいただいているので、もう少し仕事の話ができるようにしたいと思っています。
天野 : 次回に向けて、いろいろな価値をさらに高めるために、書協の検討委員会とも相談させていただいて、いくつか対策を打ちます。 フェアには08年実績で書店4,361人、取次1,423人、図書館・大学・学校関係者5,046人と多くの関係者が来場しているので、その方々に出展社がアピールする環境を整えます。 TIBFが開かれる7月は、書店が秋から冬の棚作りを検討される時期だと伺っていますので、出版社が秋冬にかけての出版企画説明会を行う場所を会場内に設けます。 そしてムードを盛り上げるために、秋冬の企画を並べたショーウィンドウを作って、来場者を各ブースに誘引することや、説明会後にパーティーを開いていただく会場も用意したいと思っています。

海外の反応も期待以上

― 海外についてはいかがでしたか?

菊池 : 海外出版社との交流については、当初あまり期待していなかったのですが、木、金の2日間、デスクを置いて担当者を付けたところ、アポイントが2日間で7社から入りました。国は韓国、台湾、タイです。 期待以上の反応があったので、今年以降、どのように展開するのかを検討していきます。 最近は、当社の新書なども韓国で翻訳出版されることが増えてきましたので、そういうことが会場にも現れているのだと思います。

― TIBFはアジア圏の出版人が集まることがひとつの特徴になっていますね。

天野 : 08年は海外から1,507人が来場しています。アジア圏の方が圧倒的に多く、半数近くが韓国です。ただ、2,3年前までは来場者の数の割に具体的な商談が少ないと感じていました。 そのため、07年から出展社と海外からの来場予定者がWebを通して事前にアポイントを取ることができるシステムをスタートしました。 実際にこのシステムを使ってアポイントを入れて、版権取引が成立したという事例も多数ありましたので、さらに力を入れていきます。 また、これまでも特に重要な海外来場者は、宿泊費を負担してご招待してきたのですが、この方々は意欲も権限も持っています。したがって20人程度だったこうした特別招待者を今年は100人に増やします。

― 目的によって会期も変わるのですね。

天野 : 特に海外出展社の場合、土曜、日曜にほとんどビジネスの話がないということがネックになっていましたので、ビジネスだけを目的にしている出展社は木、金、土の3日間で終わり、ビジネスと読者謝恩の両方を目的にしている出展社は、今まで通り4日間として、それぞれゾーンも分けて性格をはっきり分けるようにします。

社員教育の場としてセミナーを活用

― セミナーも大きな特徴になっていますね。

菊池 : TIBFでのセミナーは読者向けから業界人向けまで幅広く、定着してきたと思います。この企画だけでも成立すると思うほど、内容も充実しています。 当社としても、昨年、若手の社員は単にブース当番に追われるだけではなくて、出たいセミナーには是非出るように指示しました。今年は有料セミナーは会社で費用を負担することなど、さらに徹底します。
天野 : 今まさに今年のプログラムを作り始めているところですが、去年以上に充実した内容にしたいと思っています。 おそらく、この記事をご覧になっている方々の中にもセミナーの講師をお願いすることがあるかもしれませんが、その折には是非ともご快諾いただければと思います。

書協が「検討委員会」を設置

― 書協で検討委員会を設置したのはどうしてですか?

菊池 : 来場者から中核となるような出版社が出展していないという不満が聞こえており、そういう出版社がもうすこし出展しないとまずいのではないかという危機感がありました。 これまでも、書協は共催団体のひとつでしたが、フェアへの関わり方は結局、各出版社や出版社団体の判断に任されていて、書協として、会員出版社にどのように関わって欲しいのかという明確なメッセージを出せていませんでした。 各社の判断ということになると、どうしても人手やコストの問題など、マイナス面に目を向けがちになります。かくいう当社も、会期の7月上旬は高校の国語教科書を促進する時期と重なり、一昨年までは出展を諦めてきました。 しかし、書協としてTIBFを考えた場合、まず読者謝恩のために出版社として協力する必要があります。そして、業界人向けのセミナーが充実していて、これを一つとっても開催する意味があります。 さらに、出版社と書店などとの商談会については、各社に温度差はありますが、全国から書店や図書館の方、そして海外からの来場者がこれだけ集まっているので、いろいろな出会いや交流が可能です。 改善すべき点はあると思いますが、手をこまねいているだけでは発展がないので、良い面を伸ばして、改善するべき点をどう改善するのかということを含めて、書協が出版社をまとめていく必要があると考えました。

使い方は出展社次第

― 出版社はTIBFをどのように利用すべきなのでしょうか?

菊池 : 当社は昨年、主に読者謝恩を目的に出展し、それについては大きな成果を上げることが出来たと考えています。 しかし、同時にあれだけ多くの業界関係者が国内外から集まるのですから、業界人との交流やビジネス、そして当社にとっても期待以上だった海外出版社との交流、さらにセミナーを活用した社員教育など、様々な価値を見出すことができると思います。
天野 : 仰るとおり、TIBFにはいろいろな価値が生まれてきました。一部にはそうしたことでフェアの性格がはっきりしないというご指摘もありますが、そもそも出版社がいろいろな形のビジネスを目指し、そこに対応して展示会ができているわけですから、我々としても各出展社に合った使い方をしていただきたいと考えています。

ぜひ積極的に出展してほしい

― 書協としてどのような形でTIBFを盛り上げますか?

菊池 : 08年と09年のフェアに向けては理事長名での呼びかけ文を出しました。なおかつ、どうしても出てきて頂きたい出版社には委員会が個別に声をかけることも考えています。 やはり出版社が中心になって、責任を持ってやらなければならない。そうすれば良い方向に向かい、良い結果も得られると思います。 フェアを成功させることで、出版不況にあえいでいる業界が、出口を見つける取っかかりになるのではないかという意識を持っているからです。 我々出版業界とリードさんとの思惑が必ずしも全て一致するわけではありませんが、フェアを盛り上げて成功させるという目的は同じです。 考え方や、やり方の違いは話し合いで埋めていけばよいのです。そのために検討委員会の活動が成果を上げ始めていると思います。

リードと業界目的はひとつ

天野 : 我々がいつも意識しているのは、出展社の方にいかに喜んでいただくかということに尽きます。そうして喜んでいただくことが、当社のビジネスの基盤になるからです。 また、当社はこのフェアをほぼ恒久的に開催していくことにしていますので、そういう意味でも業界と違う方向を向くことはあり得ません。
菊池 : TIBFの出展料は、他の見本市に比べると低く設定されているようですが、中小出版社にとっては決して安い金額ではありません。 しかし、上手く販売している出版社は手元に利益が残るところも多いようです。 また、不況打開を考えると、あの場で読者と直にふれあうことは、読者が何を望み、どんな著者の本に興味を持つのかなど、マーケティングになります。 しかも、多くの業界関係者と交流できて、セミナーで新しい知見を得ることができるなど、総合的な判断をして、不況から脱出するヒントを得るためにも、積極的に出展して欲しいと思います。私もそういうことを自社で出展してみて実感しました。

エジプトが巨大パビリオン

― 今年はテーマ国はありますか?

天野 : 09年のテーマ国は「エジプト」です。300平方メートルでパビリオンを出展することが決まりました。エジプト大使館が中心になって、現代エジプトの文学と文化を伝える展示になると思われますので、エジプト関係の書籍をお持ちの出版社は、是非ともご出展いただきたいと思います。

上手くビジネスに結び付けたい

― 筑摩書房の今年の抱負はいかがですか?

菊池 : 先ほども申し上げましたが、当社は昨年、ブースが一般来場者で溢れて業界関係者とのビジネスがうまくいきませんでしたので、もう少しビジネスの場として活用することを今年の課題にしたいと思います。 経験してみて、どのように利用するのかが分かってきました。やはり費用をかけて出る以上は、上手く使ってビジネスに結びつけたいと思います。

児童書出展社半数が海外から

― 天野さんから業界に向けてのメッセージを。

天野 : 業界の皆様にお願いしたいのは、ぜひ気軽にお問い合わせいただきたい、ということです。 例えば、人文系版元の出展が前回145社に達したとか、児童書の出展も実は73社に達し、そのうち海外が半分をしめているとか、話すと驚かれるような新しい展開や事実が多々あります。 そうした事実を踏まえ、積極的に出展していただきたいのです。どんな小さな疑問でも構いません。ぜひご連絡下さい。

- ありがとうございました。

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