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みすず書房は09年10月に初のコミック『フロム・ヘル』(アラン・ムーア著、上下巻、各本体2600円)を初版4000部で発売し、これまでに5刷1万2000部を発行しているが、TIBFをプロモーションのポイントと位置づけ、ネットと連動した情報発信が奏効したという。持谷寿夫社長に聞いた。
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- いつ頃から出展していますか?
持谷 : 1988年に日本書籍出版協会主催で開かれた「日本の本展」以来、出展しなかったのは2回だけです。これだけ長く出展していることからもおわかりになると思いますが、当社ではこの展示会を自社の書籍の紹介の場として高く位置づけています。
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- 昨年は10月に発売した『フロム・ヘル』の事前プロモーションでTIBFをうまく活用しましたね
持谷 : 実は88年にもアラン・ブルーム著の『アメリカン・マインドの終焉』という新刊の発売に向け、実物見本を作り、TIBF会期に首都圏有力書店を集めて事前の企画説明会を行ったところ、初版部数を1万5000部から3万部に増やすことができたということがありました。
もちろん、本自体の力が前提ですが、こうした機会での情報発信で書店のマインドを高めることができたことも大きかったと思います。この経験がブックフェアの原点であり、20年たった前回も、『フロム・ヘル』で同様の成果をあげることができました。
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■ 書店・マスコミ対象に出版企画説明会開催
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- 『フロム・ヘル』のプロモーションでTIBFをどのように位置づけましたか?
持谷 : TIBFを外部へ情報発信する最も早いタイミングとして位置づけ、刊行日から逆算してのプロモーション計画を立てました。これをポイントにして、この時期に何ができるのか、そこから発売まで何をしていくのかを考えたのです。
これは、対外的なプロモーションと同時に、社内でどのように準備を進めるのかを決める指標にもなりました。
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- どのような準備をしましたか?
持谷 : 当社として初のコミック作品なので、どのような作品なのか分かっていただくために、まずTIBFで紹介できるトレーラー(予告映像)を作成しました。これをブースと書店向け企画説明会で上映し、その後、専用のWebサイトで流しました。
会場で上映すると、そのことが瞬く間にネットで広がりました。これら事前プロモーションによって、初版部数を当初予定より増やすことができ、潜在力がある程度市場に伝わったので、刊行後の紹介などの影響も大きく違いました。
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主要書店が一堂に集まったTIBF期間中の説明会 |
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- 発売とほぼ同時期に全国紙に記事が載ったのも、TIBFがきっかけだったそうですね
持谷 : その全国紙の記者の方とは08年のTIBFの企画説明会で知り合ったのですが、この企画に興味を持っていただき、刊行時に「みすず書房がコミックを出す」という記事を掲載してくれました。まさかそういう切り口の記事が出るとは思いませんでしたが、この記事が注目を集めたのも事実です。
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■ 展示でコアな層に情報発信
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- これまでとは違った読者層に浸透させるために、ネットでの配信とTIBFを連動させたわけですか?
持谷 : 訳者のブログなどでコアな層に断片的な情報が伝わっていたところに、TIBFで実際のトレーラーを展示したことで、「本当に出るんだ」といったレスポンスがあり、それを受けて次にどのような展開をするのかを決めていくことができました。
例えば、刊行1カ月前に自社Webで数量限定の事前予約を受け付けましたが、これも当初から決めていたのではなく、反応が出てくるなかでのプランでした。
コアな層に情報を伝えるためにネットの力は非常に大きいのですが、本は実物がない事前の段階でイメージを伝えるのは難しく、それをできるだけリアルなものにするためのトレーラーであったり、TIBFでの展示や企画説明会でした。
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■ TIBFを事前プロモの柱に
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- 同様のプロモーションは今後も考えますか?
持谷 : 出版物の売れ行きが落ちてきている理由のひとつに、出版社が流通に任せた販売をしてきたことがあると思っています。出版社が事前の情報発信をして読者に伝えていくことは、多くの出版物に必要とされていますし、結果として需要を喚起します。すべての出版物という訳にはいきませんし、やり方はそれぞれですが、個々の出版物の特性に適した事前のプロモーションはますます重要性を増しています。
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- 今後はさらに積極的な企画をお考えですか?
持谷 : 具体化してはいませんが、できればブックフェアをプロモーションのきっかけにできる、力のある企画を準備できればと思っています。それがかなうのであれば書店さんとも、踏み込んだ話ができるようになるとも思います。そういう話であれば、事前プロモーションも書店さんと組んで展開することができるかもしれません。
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- 長期間出展していますが、継続のメリットは何でしょうか?
持谷 : 単発で出展を終えてしまったら、また1からのスタートになってしまうので、もったいないと思います。
特に専門書系の小規模出版社の場合、継続することが大事です。負担もありますし、派手なパフォーマンスはできませんが、継続していると、読者や書店、図書館といった方々に「毎年行けば出ている」という信頼感を持っていただけます。これは目に見えないことですが、非常に大事なことです。
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- 読者や書店と接するという点はどうですか?
持谷 : 編集者は、外部へのアピールの仕方が得意ではありませんでしたが、これからはそれでは難しいと思っています。1冊の本が持っている潜在力を広げていくために、その担当者が外部に紹介していくことが重要です。アピールの方法にはさまざまな手だてがありますが、TIBFの場は来場者の質問に応えたり、書店さんへの説明会で発表するなど、個々の説明能力を高めることにも役立ちますし、本についての話しはやはり面白いのです。
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- 最後にTIBFへの要望などお願いします
持谷 : 『フロム・ヘル』が出たことで、TIBFをビジネスに活用できるという感覚を改めて持ちました。ただ、本というのは作る側の思いや狙いが売る側に伝わって広がっていくのが良い流れだと思うので、実際の書店さんの現場の人が個人としてではなく、もっと仕事として来られるようになるといいですね。
いまの状況を打破するためにも、そうしたコミュニケーションの場を最大限に活かすための努力をする必要があります。TIBFは様々な観点から、出版社にとって利用できる場所だと考えています。
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