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TIBFを創っている人々 (インタビューシリーズ)

持谷 寿夫 氏 文化通信(2010年2月1日発行)特集
「『フロム・ヘル』 躍進はTIBFから」
みすず書房
代表取締役社長
持谷 寿夫 氏
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みすず書房は09年10月に初のコミック『フロム・ヘル』(アラン・ムーア著、上下巻、各本体2600円)を初版4000部で発売し、これまでに5刷1万2000部を発行しているが、TIBFをプロモーションのポイントと位置づけ、ネットと連動した情報発信が奏効したという。持谷寿夫社長に聞いた。

- いつ頃から出展していますか?

持谷 : 1988年に日本書籍出版協会主催で開かれた「日本の本展」以来、出展しなかったのは2回だけです。これだけ長く出展していることからもおわかりになると思いますが、当社ではこの展示会を自社の書籍の紹介の場として高く位置づけています。

- 昨年は10月に発売した『フロム・ヘル』の事前プロモーションでTIBFをうまく活用しましたね

持谷 : 実は88年にもアラン・ブルーム著の『アメリカン・マインドの終焉』という新刊の発売に向け、実物見本を作り、TIBF会期に首都圏有力書店を集めて事前の企画説明会を行ったところ、初版部数を1万5000部から3万部に増やすことができたということがありました。

もちろん、本自体の力が前提ですが、こうした機会での情報発信で書店のマインドを高めることができたことも大きかったと思います。この経験がブックフェアの原点であり、20年たった前回も、『フロム・ヘル』で同様の成果をあげることができました。

■ 書店・マスコミ対象に出版企画説明会開催

- 『フロム・ヘル』のプロモーションでTIBFをどのように位置づけましたか?

持谷 : TIBFを外部へ情報発信する最も早いタイミングとして位置づけ、刊行日から逆算してのプロモーション計画を立てました。これをポイントにして、この時期に何ができるのか、そこから発売まで何をしていくのかを考えたのです。
これは、対外的なプロモーションと同時に、社内でどのように準備を進めるのかを決める指標にもなりました。

- どのような準備をしましたか?

持谷 : 当社として初のコミック作品なので、どのような作品なのか分かっていただくために、まずTIBFで紹介できるトレーラー(予告映像)を作成しました。これをブースと書店向け企画説明会で上映し、その後、専用のWebサイトで流しました。
会場で上映すると、そのことが瞬く間にネットで広がりました。これら事前プロモーションによって、初版部数を当初予定より増やすことができ、潜在力がある程度市場に伝わったので、刊行後の紹介などの影響も大きく違いました。

主要書店が一堂に集まったTIBF期間中の説明会
主要書店が一堂に集まったTIBF期間中の説明会

- 発売とほぼ同時期に全国紙に記事が載ったのも、TIBFがきっかけだったそうですね

持谷 : その全国紙の記者の方とは08年のTIBFの企画説明会で知り合ったのですが、この企画に興味を持っていただき、刊行時に「みすず書房がコミックを出す」という記事を掲載してくれました。まさかそういう切り口の記事が出るとは思いませんでしたが、この記事が注目を集めたのも事実です。

■ 展示でコアな層に情報発信

- これまでとは違った読者層に浸透させるために、ネットでの配信とTIBFを連動させたわけですか?

持谷 : 訳者のブログなどでコアな層に断片的な情報が伝わっていたところに、TIBFで実際のトレーラーを展示したことで、「本当に出るんだ」といったレスポンスがあり、それを受けて次にどのような展開をするのかを決めていくことができました。
例えば、刊行1カ月前に自社Webで数量限定の事前予約を受け付けましたが、これも当初から決めていたのではなく、反応が出てくるなかでのプランでした。
コアな層に情報を伝えるためにネットの力は非常に大きいのですが、本は実物がない事前の段階でイメージを伝えるのは難しく、それをできるだけリアルなものにするためのトレーラーであったり、TIBFでの展示や企画説明会でした。

■ TIBFを事前プロモの柱に

- 同様のプロモーションは今後も考えますか?

持谷 : 出版物の売れ行きが落ちてきている理由のひとつに、出版社が流通に任せた販売をしてきたことがあると思っています。出版社が事前の情報発信をして読者に伝えていくことは、多くの出版物に必要とされていますし、結果として需要を喚起します。すべての出版物という訳にはいきませんし、やり方はそれぞれですが、個々の出版物の特性に適した事前のプロモーションはますます重要性を増しています。

- 今後はさらに積極的な企画をお考えですか?

持谷 : 具体化してはいませんが、できればブックフェアをプロモーションのきっかけにできる、力のある企画を準備できればと思っています。それがかなうのであれば書店さんとも、踏み込んだ話ができるようになるとも思います。そういう話であれば、事前プロモーションも書店さんと組んで展開することができるかもしれません。

- 長期間出展していますが、継続のメリットは何でしょうか?

持谷 : 単発で出展を終えてしまったら、また1からのスタートになってしまうので、もったいないと思います。 特に専門書系の小規模出版社の場合、継続することが大事です。負担もありますし、派手なパフォーマンスはできませんが、継続していると、読者や書店、図書館といった方々に「毎年行けば出ている」という信頼感を持っていただけます。これは目に見えないことですが、非常に大事なことです。

- 読者や書店と接するという点はどうですか?

持谷 : 編集者は、外部へのアピールの仕方が得意ではありませんでしたが、これからはそれでは難しいと思っています。1冊の本が持っている潜在力を広げていくために、その担当者が外部に紹介していくことが重要です。アピールの方法にはさまざまな手だてがありますが、TIBFの場は来場者の質問に応えたり、書店さんへの説明会で発表するなど、個々の説明能力を高めることにも役立ちますし、本についての話しはやはり面白いのです。

- 最後にTIBFへの要望などお願いします

持谷 : 『フロム・ヘル』が出たことで、TIBFをビジネスに活用できるという感覚を改めて持ちました。ただ、本というのは作る側の思いや狙いが売る側に伝わって広がっていくのが良い流れだと思うので、実際の書店さんの現場の人が個人としてではなく、もっと仕事として来られるようになるといいですね。

いまの状況を打破するためにも、そうしたコミュニケーションの場を最大限に活かすための努力をする必要があります。TIBFは様々な観点から、出版社にとって利用できる場所だと考えています。

天谷 修平 氏 文化通信(2010年2月1日発行)特集
「直接の触れ合いからビジネスが」
アスク出版
代表取締役社長
天谷 修平 氏
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アスク出版は、書店との直接取引で語学書、実用書などを刊行しているが、TIBFでは書店へのアピールとともに、海外の出版社、エージェントとの版権取引でも成果を上げているという。天谷修平社長にフェアへの取り組み方などを聞いた。

- 出展の目的は?

天谷 : 2006年に初めて出展し、今年で5回目です。
当社は書店と直接取引ということもあり、まず書店へのアピールがあります。最初に出展した2006年は、初めて児童書の刊行に着手することを書店にアピールすることも目的でした。
今もこうした目的は変わりませんが、出展の中身は変わってきています。何年か続けているうちに、書店に向けたアピールの仕方が変わってきました。

■ 書店と新規の成約

- 書店とはどのような商談がありますか?

天谷 : TIBFでは店長以上の幹部レベルの方がブースに立ち寄っていただけるのですが、そういう方々とは通常、実際の本を見ながらお話しする機会が少ないので、貴重な機会です。
また、新規の書店では、今年は独自の品揃えをしているTSUTAYAのお店の方などとお話しすることができました。その後、改めて営業担当者が訪問し、新規取引を始めることができました。
こうした書店との新規契約は、出展を繰り返すほど確率が高くなっています。また、2008年からは出展スペースを2ブースから4ブースに拡大したことで、商談と商品を見ていただくスペースを分けることができるようになり、ビジネスチャンスが広がりました。

■ 版権取引、無視できない金額に

- 版権取引も活発なのですね

天谷 : 出展する以前から韓国、台湾、中国の出版社とは継続的にお付き合いしてきましたので、当初はそれほど期待していませんでした。しかし、出張では1日に回れてもせいぜい3~4社で効率がよくありませんが、ブックフェアならば先方からきていただけるので、1日でアポイントメントが6~7件、飛び込みも含めると8~9社のエージェントや出版社とお話しできます。
また、ブースには新刊だけではなくて全点展示しますので、既刊に関心を持ってもらうこともでき、結構成果が上がっています。

毎回、数十社とじっくり商談
毎回、数十社とじっくり商談

- 飛び込みもですか?

天谷 : 販路はできるだけ広げておきたいと考えていますから、契約に至らなくても、ブックフェアでお会いした出版社とは関係を継続しています。

- 出展社が本の情報を専用のホームページに登録して、興味を持った海外来場者がアポイントを入れることができる「版権システム」を主催者が提供していますが、利用していますか?

天谷 : アポイントは2日間で20件ほど入りますが、そのうち4分の1程度が新規です。そういう会社は「版権システム」を通して申し込むケースも結構あります。新規の会社にとっては、こういう仕組みの方が申し込みやすいのだと思います。

- 成約はどうですか?

天谷 : その場で契約書にサインしてもらうのはなかなか難しいですが、やはり、その後の利益に繋がる、良いきっかけにはなっていますね。ここで興味を持っていただいたタイトルについては、その後の商談でほぼ100%契約します。特に日本語教育に関する本はほぼすべての新刊で、それ以外も6~7点は成約します。
1タイトルでみると大きな金額ではないのですが、30~40タイトルで契約ができて重版になってくると無視できない金額になりますから。

- TIBFにどんな意義を感じていますか?

天谷 : 普段、当社の従業員が書店や読者と直接接する機会はあまりありません。でもTIBFでは、シフトを作って全社員がどこかで必ずブースに立つようにしていますので、編集者はもちろん、営業担当者も日頃接していない読者と接する機会がもてます。
また、一般来場日には読者と直接触れあって、プッシュ型の営業トークが可能です。そういうなかで、読者からは「こんな本はないの?」とか、「こういう本を作ってほしい」といった問い合わせが結構あります。何が読者の琴線に触れるのかを、生の声として聞くことができます。
昨年の読者への売り上げに関しては、4日間で100万円ぐらい販売することができました。

■ 新企画誕生も

- 会場で企画が生まれることもありますか?

天谷 : あります。読者もそうですが、著者の方が当社の展示をご覧になって、「自分ならこういう本が書ける」とご提案をいただくこともあります。
実際に一昨年のTIBFでお会いした著者から、英会話本の企画コンセプトをかなり具体的に提案していただいたのをきっかけに本が出て、結構ヒットしています。

- 会期後のフォローはどうしていますか?

天谷 : 毎年、終了後には全員で反省会をして、悪い点があれば修正するようにしています。
会期後にどれくらい結果が出たかチェックして、必ず反省会と打ち上げをやるのが毎年のルーチンになってます。実際にTIBFで結果を出すために頑張る、そういう一連の流れが組織を強くすることってあるんですよ。

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